元来、犬は人間のパートナーであり、何かあると吠えて知らせてくれます。犬としては理由があって吠えているのですが、度が過ぎると「無駄吠え」と言われてしまいます。
飼い主ですらうるさいと感じるレベルの犬の声は、周囲ご近所の迷惑になるので極力減らす努力をおこたらない様にしたいものです。
飼い主なら誰しも、愛犬のしつけをきちんとしたいと考えているはずです。でもなかなか理想通りにはいかないのが実状です。
これから犬を飼う人も、すでに飼っている人も、犬のしつけのポイントをおさえつつ、繰り返し長い目で行っていきましょう。
- 子犬の時期の社会化が重要
- 犬が吠えるパターン(要因)
- 1電話・インターホンの呼び出し音、来客時の対応
- 2掃除機、ドライヤー、ジューサー等、モーター音の対応
- 3金属音、シャッター、缶をつぶす音などの対応
- 4その他 犬が警戒、反応する事はたくさんあります
子犬の時期の社会化が重要
子犬のうちから、家の中でも外でも、他人や他の犬、色々な音など多様な刺激を与えて慣れさせておく事(社会化)が重要です。
そうは言っても、成犬を譲り受ける場合もありますし、個々の犬の性格もあります。「なぜ、犬が吠えるのか」飼い主であれば、生活をともにする中で、その犬の吠える理由がある程度わかってくるはずです。
今からでも「飼い犬が吠える行動」を減らす事はできます。「うるさい=無駄吠え」と決めつけて頭ごなしに叱ったり、またはあきらめたりするのではなく、人間側の行動を見直す事から始めてみませんか?
犬が吠えるパターン(要因)
- 電話の呼び出し音・インターホン 来客
- 掃除機、ヘアドライヤー、ジューサー、ミキサー等のモーター音
- 金属音 シャッターの開閉時の音、缶をつぶす音、硬貨がぶつかる音など
- 人の早い動作 拭き掃除、ほうきで掃く、カーテンや窓の開け閉めなど
- その他 ガムテープをはがす音、工事音、何だかわからない物音など
では無駄吠えの対応策をみていきましょう。
1電話・インターホンの呼び出し音、来客時の対応
電話やインターホンは突然鳴り出すので、人間でも一瞬驚きますよね。犬にとって最大級の警戒体制に入って吠え出すのも理解できます。犬が音に反応して吠え続ける場合、犬を制止して飼い主の側にオスワリかフセをさせて落ち着かせましょう。
ただ犬は、音への警戒心から興奮状態になっていて、飼い主の命令に従いにくくなっています。他に家族が在宅していたら、犬をつかまえて、もう吠える必要がない事を教えましょう。
家族で決めておいた共通の言葉で、落ち着いたトーンで短くしかり、おとなしくなったらほめます。
例) 「シーッ。静かに、、、いいこ!」
騒ぐ犬を叱り、飼い主の顔を見たらくちびるの前に人差し指を立てて「シーッ」と言います。犬が静かになったら「イイコ!」と言って犬の頭をなでます。
あらかじめ電話やインターホンの音で訓練しておく方法もあります。
呼び出し音を使った訓練方法
- 犬のサークル(クレート)の側にオヤツ入りの容器を用意しておく
- 「犬の名前+ハウス!」のコマンドで犬をサークル内に誘導する
- 犬にオスワリをさせ、オヤツを見せてマテの状態で電話かインターホンを別の家族に鳴らしてもらう
- 犬が吠えたらオヤツを見せて「シーッ」、「オスワリ」、「マテ」のコマンドで静かにさせる
- 犬が4をできたらオヤツをあげてほめる
すぐにはできなくても、繰り返し訓練を行ううちにやがて、電話やインターホンの音がすると、犬が自らサークルへ行く様になります。有名な「パブロフの条件反射」の様に、「音とオヤツ」が犬の記憶に結び付けられるのです。
来客時に犬が吠える場合は、訪問者によって犬の反応にも差が出ます。訪問者がいなくなれば犬の警戒も解除されます。
訪問者が家に入って滞在する時は、飼い主とお客さんのやり取りや関係性を犬は観察しています。
犬が警戒してなき止まない場合は、飼い主は落ち着いた態度で犬に接し、別室に犬を隔離しましょう。犬が静かになったら、同じ部屋に戻します。再び吠え続ける様なら、また隔離を繰り返します。
2掃除機、ドライヤー、ジューサー等、モーター音の対応
犬は電動モーターの音に激しく反応します。犬にとって警戒レベルが非常に高い、もっとも興奮するタイプの音がモーター音です。一般的な犬の多くは、飼い主が強く叱っても、なだめても、モーター音が鳴り止まない限り静かにさせるのは困難でしょう。
我が家の飼い犬シェルティを例にすると、調理用のジューサーやミキサーを使うと犬がとても騒ぐので、犬をおさえたり、抱きしめると、ものすごく犬の心臓がドキドキしているのがわかります。
とにかくモーター音への犬の反応は、すさまじいので音が聞こえない様に別の部屋へ犬を連れていくしかありません。
我が家の場合、ミキサーや掃除機をかける際には、浴室に犬を隔離します。(誤飲等の事故を防ぐ為にスポンジや石けん、危険な物は犬が届かないところへ置きます。)
犬の体格や性格によっては、浴室のドアに突進して破壊したという話もあります。犬をつないだり、あらゆる事態を想定して対策しましょう。
なるべくモーター音が犬の耳に届かない様に、部屋+洗面所+浴室すべてのドアを閉める事(コレで3重)をオススメします。
3金属音、シャッター、缶をつぶす音などの対応
人間よりも優れた聴覚を持つ犬は、金属音に特に反応します。犬を飼うと気が付きますが、生活音の中にはたくさんの金属音が含まれています。
うちの飼い犬のシェルティの場合も、あらゆる金属音に対して強く吠えます。(世間一般でシェルティは無駄吠えのレッテルをはられています)
小銭の音や缶をつぶす行為はしない様に心がけても、シャッター(雨戸)の開閉はしないわけにはゆきません。
雨戸シャッター開閉時の対策
方法その1:犬がゴハンを食べている間にシャッターの開け閉めをする
方法その2:片手で犬を抱きかかえてシャッターの開け閉めをする
(我が家の場合、中型犬10.5kg 手動のシャッターなので開けるときはキツイ)
方法その3:誰かに犬をおさえてもらい、なだめている間にシャッターを開け閉めする
我が家では「シャッター閉めるから、サリーをおさえてて」と言うと、「シャッター」という言葉を犬が覚えてしまっているので騒ぎ出します。なので他の言い回しや合図をおくって、誰かが犬をおさえます。シャッターをガラガラしている間、犬をホールドして「シーッ、静かに」と言って静かにさせます。
飼い主が言い聞かせるとある程度吠えるのを我慢するので、できた分ほめてから解放します。
金属音を出すと犬が騒ぐ事はわかっているので、なるべく出さない様にします。音を出してしまう時は家族に協力してもらい、なるべく犬を安心させます。飼い主が犬の体をかかえたり、おさえたり、触れながら声かけすると、犬も大なり小なりおとなしくなります。
4その他 犬が警戒、反応する事はたくさんあります
犬が嫌がる音アレコレ
- 発泡スチロールがすれる音
- ガムテープをはがす音
- 納豆パックを開ける音
- 爪切りの音
- プチプチをつぶす音 なんでー?
犬が反応する動作
- 人の早い動き
- カーテン、窓の開閉
- ホウキ、拭き掃除
- 家族のケンカ
とにかく犬が嫌がる音や動作を知り、犬の目の前でなるべく行わないようにして、犬のストレスを減らしてあげましょう。
生活上、必要な動作や音は仕方がないので犬の気持ちを留意しつつ、犬が吠えたら落ち着いた声で叱り、犬が吠えるのを我慢したらほめるを積み重ねていくしかありません。
犬は本当によく飼い主の行動、表情、様子を見ています。
うちの犬の行動を例にあげると、爪切りやハンドミキサー、ジューサーの収納場所をおぼえています。キッチンの収納扉や小物入れの引き出しを開けると、サリーが慌てて走り寄って来ます。サリーの予想通り、爪切りやミキサーを取り出すと、「ワンワン」吠えて騒ぎ出します。
飼い主の方も学習して。ミキサー類を使う時はサリーを浴室に隔離してから収納場所から出すようにしました。爪切りの置き場所は、サリーが普段いるリビングではなく別の部屋に変更しました。飼い主が対応を気を付ける事で犬が吠える要因を減らせます。
犬の観察力、記憶力の良さには感心します。だからこそ飼い主は、「コマンド・表情・ごほうび」をうまく使って犬の訓練・しつけを上手に行う事が大切です。犬は元来賢い動物です。飼い犬の行動は飼い主次第という事を忘れてはなりませんね。
そうは言っても犬のしつけは簡単ではなく、人間も犬もお互いに信頼関係や正しい習慣を構築するには時間がかかります。
仮に今はうまくいっていなくても、「犬のしつけ」を念頭に置き、何度でも対応を重ねていけば事態は良くなっていくはずです。
犬のしつけ方をおさらいしようと、複数の本やインターネットの記事を読んでみると、方法は同じとは限らず、中にはまったく違うやり方や考え方のものもあります。犬の性格によって、しつけの方法が変わるというドッグトレーナーの意見もありました。
犬の飼い始めには、しつけについて一通り勉強していても忘れてしまっている事柄もあったりします。逆に、犬を飼い始めた当初はわからなかった事が犬の性格や行動を見ているうちにわかる事もあります。
人間にも当てはまりますが、同じ性格の持ち主はおらず犬にも個性があり、共通の正解はなさそうです。お互いに相手の気持ちに寄り添って、信頼関係を築き、成功体験を積み重ねて暮らしていきましょう。
甘やかし過ぎず、時には注意したり、しかったりして、人間も犬も社会のルールに適応できる様にしたいものです。
まとめ
①犬のしつけの前提条件 飼い主(ボス)と犬の関係性を築いておく
- 犬が先に食事をしたり、ソファや飼い主の布団に上がらない様にする
- 犬にオヤツや散歩、その他の催促をされても従わない
➡人が犬の言いなりでは、犬がボスになってしまう
②犬が良い事をしたらほめて、悪い事をしたらしかる
➡ほめるのも、叱るのも出来事から1秒以内でわかりやすく行う(アイコンタクトも)
- 静かにできた=「いいこ」 笑顔でほめる
- 騒いで吠えた=「シーッ。静かに」 落ち着いたトーンで短く言う
③犬に無駄吠えさせない訓練・しつけをする
- いろいろな音に慣れさせておく
- 音がしても静かでいられたらごほうびをあげる
④犬が苦手な音から、犬を隔離する
- 掃除機やミキサー、その他を使用する場合は、犬を別室に移す
- 犬が散歩に出かけたタイミングで掃除機をかけたり工夫する
犬の問題行動による困り事、さらには家庭内やご近所トラブルに発展する場合は、公共機関や民間団体が主催する犬のしつけ教室に参加したり、プロの訓練士に相談する事をオススメします。
福岡市動物愛護管理センター わんちゃん教室より
[しつけって何なの?]
☆人間社会の中で《犬》が共に生活していくために最低限必要な【ルール・マナー】を学ばせることです。
☆《飼い主》と《犬》が、よりよい関係を築くためには必要です。
飼い主さんが基本的なしつけを《する人》か《しない人》かによって、愛犬が人間社会で生きていくこれからの10年または15年が【楽しく過ごせる】のか【苦痛を伴う】ものかに分かれるでしょう。
[しつけを始める前に知っておこう!]
犬の習性について
犬の祖先はオオカミであるといわれています。その昔からオオカミは群れをつくって自然界を生き抜いてきました。群れは、縦社会になっています。その中には必ずボスがいて1頭1頭に順番が付いています。そして群れにおいては、上位の者に対して服従する。一方で下位の者に対してはどんなことがあろうと従わないというはっきりした行動をとります。犬はそういう本能を人に飼われるようになった今日でも持ちつづけています。
[主従関係を築くための基本的な訓練]
アイコンタクト スワレ・フセ・マテ・コイ・ツケ 5つのコマンド(号令)
[飼い主がリーダーになるための普段からの接しかた]
すぐ誉めて、すぐ叱りましょう
犬は行った行為をすぐに忘れてしまいます。あとで誉めたり叱ったりしても、犬にはなんのことだか分かりません。良いことをした時には【1秒以内】に誉めましょう。そして悪いことをしたら【1秒以内】に一瞬だけ叱りましょう。そのかわり、悪いことをやめたらすぐに誉めましょう。
しつけや訓練の最後には必ず誉めて終わりましょう。
【成功の積み重ね】が犬に自信をつけさせます。失敗したまま、叱られたままでは、犬が次のしつけや訓練を喜んでしなくなります。
[引用抜粋:福岡市動物愛護管理センター わんちゃん教室より]